地質調査の未来を考える #001 存在としての『縁の下の力持ち』からの脱却
ずっと感じ続けていた違和感
『縁の下の力持ち』
皆さんはこの言葉を聞いてどんなイメージを持ちますか?
私自身この言葉に全く悪いイメージはありません。陰ながら頑張って支えてくれる存在、というどちらかというと良いイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
広くとらえると真面目で献身的な存在とも取れる気がします。
正式には・・・
他人のために陰で苦労、努力をすること、また、そのような人のたとえ。
小学館 デジタル大辞泉
ということですね。個人的に全くその通りのイメージでしたね。
そこで本題なんですが、私のいる地質調査の業界では、地質調査の仕事を簡潔に紹介するときなどによく『縁の下の力持ち』という言葉が使われています。
特に学生や若者向けの会社説明会やPR資料で何度か見かけました。正直に言いますと、私のいる会社でも学生向けのパンフレットに大きく『縁の下の力持ち』と書いていました。(笑)
確かに地質調査という仕事は、その仕事内容や業績が目立たない業界であることは間違いありません。
道路でも橋でもビルでも建設中の様子や完成後の施設は一般の方でも目にするでしょう。
しかし、その建設の前に必ずと言っていいほど行われている地質調査は、調査中の様子が人目に付くこともほとんどありませんし、もちろん調査を行った会社の名前がでることもまずないでしょう。
先日あるテレビ番組を見ました。市街地の中で大規模なビルの解体を行う様子を追いかける内容でした。非常に見ごたえのある内容と映像で、子どもたちと一緒に興奮しながら最後まで観てしまいました。
私もこの業界に入る前だったらそこまで意識することはなかったと思いますが、単に解体工事と言っても様々な工事の工程と種類があり、多くの会社がそれぞれの専門的な技術力を生かし、協力して行っています。
しかし、明らかにヘルメットのロゴが違うのに、テレビ的にも紹介されるのはいわゆる工事の〝元請け〟企業の名前だけです。
その時も紹介されたのは日本を代表するスーパーゼネコンさんでした。みなさんもCMとかで一度は聞いたことのある会社だと思います。
ただこのあたりのことは世の中のいろんな仕組みやしがらみもありますから仕方ないとして、私が感じていた違和感というのは
『縁の下の力持ち』って自分をアピールするときに使う言葉ではないんじゃないか ということです。
業界外の人たちから、『地質調査はやっぱり、縁の下の力持ち的存在だよね』と言っていただくのは非常にうれしいことです。しかし、自分たちの仕事を自らアピールするときに『縁の下の力持ちです。』ということに違和感を覚えたんですよね。
特に若者、これから将来の仕事を考えようという学生さんたちに対して地質調査業の立ち位置を説明するときに、その言葉を使うことが果たしてプラスになるのかと。
最初から、日が当たらないけど必要な仕事ですよ、と言われている気がして、現代をそしてこれからを生きる若者たちにはいまいち響かないんじゃなかと。
もっといい言葉があるのではないか、思い当たらないのであれば見出していかなければならないのではないかと思ったのです。
誰もが自分を発信できる時代だからこそ
現代は、急速なインターネット環境の向上とSNSの普及に併せて、スマートフォンとそれに搭載されるカメラの高機能化やアプリの充実によって、誰もが、デザイナーやクリエーター、ライターとなり、個人で発信していくことが簡単にできるようになりました。
それによって今まで知らなかった、出会うこともなかったものに出会い、共感することができます。
より多くの人に自分の人生や仕事や取組みについて知ってもらうために、これらを使わない手はありません。
もうすでに多くの企業や個人が自身のアカウントを持ち、様々な形で発信を始めています。地質調査の業界においても、早い段階から発信を始められている方々もいらっしゃいます。
『縁の下の力持ち』だからと言って、その仕事自体が、『陰』の存在である必要はないはずです。
これまで通りの働きはもちろん変わらず続けていくのですが、そこから一歩踏み出して、地質調査という仕事の重要性や役割、楽しさや辛さ、独立することのメリットデメリット、ボーリングを行う技術者のリアルな姿などを発信していくことが大事なのではないかと思います。
なぜならばずっと行動しないままに、変化をしていかなければ、次世代の技術者を育て、技術を継承できなくなり、そうなると『縁の下の力持ち』としての役割さえ果たせなくなる可能性もあると思うからです。
個人的に、『狭い世界で生きていくことが、その道を究めることではない』と考えています。広い視野を持ち、将来を見通しながらも、目の前の流行や世の中の変化にも敏感でいることが重要ですね。
長々と偉そうなことを言ってしまいましたが、私自身まだまだなにもできていません。
だからこそ、同じ仕事・業界にいる方々と意見を出し合いながら、業界全体で良い方向へ進んでいきたいと考えています。
みなさんで、存在としての『縁の下の力持ち』から脱却して、地質調査という仕事を若い世代へつないでいくためにどんどん発信していきましょう!
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