世界文化遺産 三池炭鉱『万田坑』の 光と陰
先日、調査の仕事の関係で熊本県荒尾市にある『万田坑』を訪れる機会 がありました。
明治日本の産業革命遺産として世界文化遺産に登録された場所ですが、同じ県内に住んでいながら実際に現地を訪れたことはありませんでした。
三池炭鉱の中でも主力となった炭鉱の一つで、明治から大正期の日本の近代化を語るうえでは欠かせない製鉄・鉄鋼業とそれらを支えた石炭産業のまさに中心地ともいえる場所です。
現存する第二竪坑櫓と機械室の佇まいは、歴史をほとんど知らなかった私でも圧倒されるような雰囲気を持った場所でした。
炭鉱で働く人たちはこの場所から地下264mまで伸びる竪穴を専用のケージに乗って降り、そこで当時『黒いダイヤ』と呼ばれた石炭を採掘していたのです。
万田坑で採れる膨大な量の石炭は、主力が石油に移りかわり閉山するまでのおよそ124年間にわたって日本の産業革命と近代化に貢献してきたそうです。
実は最近で言うと、映画『るろうに剣心』のロケ地にもなったそうです。確かに敷地内の様々な遺産は明治から大正期の日本の空気というか匂い見たいなものを纏っていて、絵になります。
ただ自分が感じたのはどちらかというと、日本の近代化を支えた歴史的価値のある『光』の部分よりは、厳しい環境下で過酷な労働をしてきた多くの人たちという『陰』の部分のほうが強い印象を受けたのが正直なところです。
もちろん、資料館には労働者の作業服や道具、働いている様子などの写真などを見ることができますが、強制労働などの暗い歴史についてはほとんど触れられていません。
なのに、初めて見たときに、その『陰』の方を強くいしきしてしまった自分は、感覚がズレているのかも知れません。
実際に万田坑では、朝鮮や中国の人たちが過酷な環境下で強制労働を強いられてきたという過去があるようで、世界遺産として登録されるまでの間においても様々な反対意見もあったようです。
光があるところには陰がある。それはこの世の中いおいて必然です。
だからその事実を変えることはできないので、生きていく中で常に『光』を支える『陰』の存在があることを忘れないことが大切なのではないかと感じました。
私たちが何不自由なく生活している今も、生きていくのに最低限必要な水や食料を手に入れることすら困難な人たちも多くいます。
そして、コンビニで商品を買うにしても同じで、その商品を製造する人がいて、それを運ぶ人がいて、販売してくれる人がいて、さらにそのあとのごみを回収し、処理してくれる人たちがいて初めて、現在のような生活ができます。
それに深夜であろうが、早朝であろうが欲しいときに欲しいものが買えるのは、その時間も誰かが働いているからです。
ちょっと話が遠いので無理やりかもしれませんが、地質調査の存在もどちらかというと『陰』なる存在かもしれません。
地質調査は建築物などが建つ前に調査を行い、それをもとに設計され、工事が始まります。
工事の様子は比較的目につきやすいですし、見たことのない人はいないのではないでしょうか?
しかし、地質調査の現場を見たことがあるという人はそんなに多くはないと思います。
どんな様子でどんな作業をしているのか知らない人も多いでしょう。欠かすことのできない重要なものですが、人目につくことはほとんどありません。
だからこそ、地質調査という仕事とそれに携わる人たちのことをもっとアピールしていきたい!そう思ったんですよね。
だって、そんな仕事があるということを知ってもらえなかったら、子どもたちや若者にとっての将来の夢や目標にはなれないから。
まあ、そうは言っても特殊で専門的な仕事なので、興味を持ってもらえる人は実際多くはないでしょう。
でもだからこそ、より多くの人に、少しでも早い段階でおの仕事のことを知ってもらえるようにこれからも活動していきます。よろしくお願いします。
会いたくなったら、旅に出よう!!