地質調査とトレイルランニング -スポーツイベントにおける地質調査の可能性-

地質調査のフィールドを広げる

  

普段から地質調査に特化して記事を書いているのですが、その中心はボーリング調査であることが多いです。

基本的にはそのように『地質調査=ボーリング調査』と捉えてもらってもほぼ間違いではないと思います。

実際には、一言に地質調査といっても様々な調査方法や目的があります。ただ、やはり業務として行う割合や行政からの発注業務も大半はボーリング調査を伴うものです。

  

ボーリングマシンを使った地質調査

  

  

何度も書いていますが、道路や橋、ダム、トンネル、そして様々な建築物を作る際にはほぼ全てにおいて地質調査が行われています。しかし、その調査自体は建設工事に先立って行われることもあり、ほとんど一般の人の目に触れることもありませんし、メディアで取り上げられることもあまりありません。

  

さらに災害復旧や様々なインフラの維持管理においても地質調査は必要になるため、これから先も需要が無くなることは無いでしょう。

 

しかしながら、地質調査の業界としてもただこれまでと同じ業務内容を、過去の延長線上だけでやっていけばよいという時代はもう終わりにする時なのかもしれません。

 

地球の環境破壊やそれに伴う温暖化、異常気象などの問題が近年顕著になっています。

地質調査の業界としても、もちろんこれまで通りの必要不可欠な地質調査を行いながらも、地球環境の保護といった観点でも業界の在り方、事業の方向性を考えていかなければならないではないかと思います。

  

そこで一つのきっかけとなりそうな地質調査の仕事というのが、以前に記事に書いたスポーツイベントが環境に与える影響を調査する『モニタリング調査』だったのです。

  

過去の記事より

  

この地質調査とトレイルランニングとの出会い、そして調査の内容等は上の記事に書いています。

  

まだまだ、ほんの小さな1歩ではありますが、こういった新たな取り組み、事業を作り出していくことも重要だと思います。

そこで、今回はその続きとして、今年の実際の調査の流れをまとめてみます。

  

  

トレイルランニングと地質調査

今回の大会は早朝から行われますので、まずは事前に調査ポイントの下見に行くところから始まります。

  

ランナーさん達が走る前の調査ポイントの地形や植生の状況を確認します。

そもそもこの調査を行う必要性が出てきたのは、コースの一部が『国立公園』を通過することからでした。

 

『国立公園』とは・・・

日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限するとともに、風景の観賞などの自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところであり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園です。

環境省 国立公園の定義 より

  

前回までは、土壌硬度計を使った土壌硬度の測定や植生等の変化の写真記録、地面のえぐれ具合などの測定でしたが、今回は、新たに『LiDAR』を使った地形の3Dスキャンを取り入れてみることにしました。(測定結果はまた後日・・)

  

3Dスキャンの練習風景

  

  

時刻は午前6時頃、スタート会場では準備が進められていました。

レースのスタートは、午前6時30分。この時期なので、空は随分と明るくなってきていました。

 

レースのスタート会場

  

  

スタート直後の登山道の様子。小さくて見えにくいですが、序盤はランナーさんで渋滞気味です。

ただ見た目にも急な山道を走って登っていくのだから、すごいとしか言いようがありません。

  

登山道を駆け上がるランナー

  

そして時をほぼ同じくして、別の場所から調査部隊も静かにスタートを切ります。もちろん観客はいません。

  

調査部隊のもスタートを切る

  

  

調査を行うのは、全てのランナーが通過した後ですが、コースとは別の近道の登山道から登っても調査地点までは約2時間弱の道のりです。

もちろん調査部隊はトレイルランナーではありませんので、そんなに早く駆け上がることはできませんので・・

  

そして、調査箇所手前の広い場所で待機します。

しばらくすると、最終ランナーさんと『最後尾』のビブスを付けたスタッフさんが通過します。スタートからおよそ2時間20分でした。

(この時すでに数名の上位のランナーさんはゴールしていました。。早い。。)

   

   

最終走者を確認し、調査ポイントへ

  

最後尾を走るスタッフさんの後を追うように、調査ポイントへ向かいます。

写真の場所は土の表面が乾いていますが、この前日は雨が降っており、全体的にコースは湿って滑りやすい状況でした。

  

調査ポイントへ到着したら、さっそく計測を開始。やはり地面は濡れてズルズルの状態。後で聞いたら、滑って転倒したランナーさんも結構いたとのこと。

  

  

調査ポイントの変状具合を調査

  

  

湿っていたこともあるかもしれませんが、300人ほどのランナーさん達がこの場所を駆け抜けたのですから、やはり地面が踏み荒らされ、えぐれている部分もあるように感じます。

  

これを見ると確かに、スポーツイベントで自然の中を走ったり、通過するだけでもその場所の自然や地形などの環境に影響を与えていることは間違いなさそうですね。

特に参加者の人数が多い場合や、地面が湿っている時などはその影響も大きくなりそうです。

  

趣味で登山やキャンプをする方や、このようなトレイルランニングの大会などに参加される方は、ここ数年の密を回避するためのアウトドア志向の高ま高まりに合わせて、このところ増えているようです。

自然はやはり素晴らしい

確かに、大自然の中を颯爽と駆け抜けるこのトレイルランニングも、静かな山の中で楽しむキャンプも大変有意義で素晴らしいと思います。

レースを走り終えて、ゴールした時のランナーさん達の清々しい表情と言ったら、それはもうこちらもなんだか嬉しくなってしまうほどです。

  

ただそこで忘れてはいけないのは、やはりそれに伴う自然環境への負荷は少なからずあり、これまでの自然環境守り、維持していくためには、誰かが管理を行って、手を掛けなければならないということです。 

それがこの調査を通して感じたことでした。

  

まだまだ、この新しい地質調査の仕事も一歩を踏み出しただけの段階です。これから、もっともっと視野を広く新しいフィールドにも挑戦していくことが大切だと思います。

  

また何か新しい取組みが出来そうな時は、ブログに書こうと思います!

  

  

  

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