環境保護と地質調査の役割 -トレイルランから矛盾を突き破る-

トレードオフの関係にある両者

地球環境への負荷を減らし、持続可能な社会を作ろうという動きは今、まさに世界中で広がっています。

そんな中において、多くの企業がそれぞれの会社におけるSDGsに対する目標や行動指針を表明しており、自分たちの利益だけを追いかけるのではなく、地球環境を守るという取組みに対する自分たちのスタンスを示すことが重要になっています。

  

では、地質調査の業界はどうでしょうか?

  

昨年、採用活動の一環として地元の大学で地学を学ぶ学生を相手に、業界・企業の説明会を開いた時に、参加してくれた一人の学生がこんなことを言っていました。

  

『地質調査に興味があるけれど、地球環境の保護ということも興味があるのでどうしても矛盾してしまう。』

  

いやぁ、とてもいい意見だと思いました。きっと優秀な学生なのだろうと素直に思いました。

確かにそうなんです。地質調査、広くは建設業というのは環境保護というものとトレードオフの関係にあるのです。

  

 

開発行為
開発行為はやはり環境破壊なのか?

  

  

トレードオフの関係というのは、つまり『両立できない両者の関係性』のことを言います。高品質と低価格など、ビジネス用語として用いられることが多いですね。

  

地質調査と開発行為というのは非常に密接な関係です。例えば、山や森を切り拓いて道路を通し、そこにいろんな施設を造るなどの開発行為の事前調査として行われるのが地質調査だからです。

  

人々が安全で、便利な暮らしを営むことのできる場所を造るために行われる様々な土木工事や建築工事ですが、裏を返せば、地球環境の破壊と同じことかもしれません。

  

  

ただ、原子力発電の問題も似ている部分があると思うのですが、地球環境を守るためだからと言って、今更、これまで作り上げてきた社会や便利な生活は捨てられないし、生活水準を昔に戻すということはそれもまた現実的ではありませんよね。

  

私自身、電気の無い生活をしなさいと言われても、前向きに捉えられる気がしません。

  

  

環境保護としての地質調査 答えはどこに

  

もちろん、これまでの生活は維持しながら、地球環境への負荷を低減するための取り組みは様々な業界で行われています。

そんな中において、地質調査業として地球環境の保護に貢献できるような役割を果たせる場所はあるだろうかと考えることもありました。これまでとは違うフィールドで、新たな形で関われる仕事とは何か?

   

そんなとき、ふと舞い込んだ業務の依頼が『トレイルランニング』に関わるものでした。

  

トレイルランニング(イメージ)

  

  

トレイルランニングとは、陸上競技の中長距離走の一種とされますが、山岳地帯の山道や林道など様々な地形の場所をリュックサックを背負って駆け抜けるレースです。近年、日本でも人気が高くなってきており、私の周囲にもトレイルランナーが何人もいます。

  

最近だと熊本県でも、球磨郡の水上村から八代海まで、球磨川の流域172kmを駆け抜ける『球磨川リバイバルトレイル』も開催され、災害からの復興を目指す機運と相まって大きな盛り上がりとなったようです。

   

 

では、このトレイルランニングと地質調査の関係性とは何でしょうか。

トレイルランニングは大自然の中、山道や林道を走ることが多く、そのコースが国立公園などの指定を受けた場所やその周辺を走ることもあります。

  

 

大自然がコースになる
大自然の中を駆け抜ける※イメージです

そうするとやはり、人がたくさん走り抜けることで、地面がえぐれるなどの変形が起こったり、周囲の植物への影響が出たりすることがこれからの問題となってくるのだという話でした。

  

そのため、環境へどのくらいの負荷がかかり、どのような影響を及ぼしていくのかを継続して調査し、スポーツイベントの開催と環境保護を両立させる方法を探っていくことが必要になるのですね。

 

まさにこのトレードオフの関係にある両者をお互いに実現するために、地質調査を行う。環境保護の役割としての地質調査の仕事がここに存在したのです。

  

  

の話を聞いた時は、本当に嬉しくなりました。もちろん通常の地質調査も多くの人の暮らしを守る重要な仕事です。さらにそこにこのような役割が加わることは、地質調査業界としても非常に重要なことだと感じました。

  

今回の調査は、初めての取組みということもあり、土壌硬度計を使った大会前後での土壌硬度の測定や、植生の変化の記録、地面のえぐれ具合などの評価といった基本的なものでした。

  

しかし、この調査は非常に大きな一歩だったように感じています。

  

これからも開催されるたびに、大会前後での環境変化を調査し、記録していくことで、いろいろなことがわかってくるのではないかと考えています。

人と自然が共存し、次世代へ繋いでいく。そのための地質調査として。

  

飛躍
その一歩が大きな飛躍となるか

  

何度も書いていますが、地質調査は目立たない仕事です。でも必要不可欠な仕事です。

  

そんな地質調査業界がこれからも衰退せず、多くの技術者が活躍し、人々の暮らしを守る業界であり続けるために、これまでの仕事に満足することなく、もっと活躍の場を広げ、新たな役割を果たしていけるようこれからも挑戦していきたいですね。

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