地質調査における積算とは-青本と赤本などの基準書紹介-
地質調査という業務をお金に換えるもの
地質調査に限らないのですが、工事や委託業務においての積算は非常に重要な要素になります。
簡単に言うと、いわゆる『見積り』のようなことです。
地質調査を行う際の実際のボーリング作業や各種試験、それに付随する運搬費や準備費、足場の仮設、安全対策のための費用など外業の部分と調査によって得られたデータの整理や資料収集・整理、そして高度な地質の解析、さらに報告書の作成費用等の内行の部分を積み上げて金額を算出するのが積算です。
まさに、技術者が現場や社内で行った仕事をお金に換える作業になります。
地質調査における積算では、おおまかに言うと
・直接調査費
・間接調査費
・解析等調査業務
・諸経費
に大きく分けられ、各項目ごとに基準書に沿って金額を計算していきます。
積算の基準になるのは?
積算を行う際に必要になるのが、ルールを示した『基準書』とそれぞれの作業や物の単価を示した『市場単価』です。それらをを実際の作業内容にあてはめながら金額を計算していきます。
『基準書』
地質調査の積算に使う基準書は大きく分けて二つです。
国土交通省から発行される、『設計業務等標準積算基準書』通称〝青本〟と呼ばれるものと、
一般社団法人 全国地質調査業協会連合会(全地連)が発行している『全国標準積算資料』通称〝赤本〟です。業界内では、青本・赤本で通じます。
※『設計業務等標準積算基準書』通称 青本の令和4年度版が発売されました。
新品価格 |
青本は1年に1度新しいものが発行されます。少しずつ基準が改訂されていきますので、常に新しいものをチェックしておく必要があります。
設計業務等と書かれているように、設計・測量・地質調査の基準が一つにまとめられたものです。
こちらはアマゾンなどでも購入することができます。
ネットでも基準書は一部閲覧できるのですが、最新のものは以前からの変更点のみになります。
最近で言うと、地質調査に係る部分では、安全費の導入や、宿泊を伴う場合の旅費交通費の率化、また地盤情報データベースへの登録にため検定費などが新たに明記されるようになりました。
また、最新の令和4年度版より、これまでなかった地下水位観測に関する歩掛が記載されています。これについては『待ってました』という感じですね。
一方、赤本については、全地連から協会員に対して配布されているものです。
こちらの赤本は、青本とは違い、地質調査に関わるもののみが記載されています。そのため、地質調査に関わる様々な試験や観測、それに伴う解析などについて詳しく解説されています。
2つの基準書がありますが、基本的には〝青本〟を基準として使用します。また、県や市町村等の地方自治体の定める基準書もこの青本を元に作られています。
なので優先順位は
〝青本〟→〝赤本〟です。
つまりこの基準書が積算を行う際の教科書、ルールブックの役割っを果たしますので、私も毎回迷ったときにはすぐに基準書で確認しています。
ただし、県や市町村の仕様書も基本的には、この〝青本〟に則っているものの、微妙に細かい部分が書かれていなかったりすることもあります。
そのため、毎回そのまま採用できないこともありますし、担当者ごと捉え方が異なる場合もあり、細かい打合せが必要になることもあります。
そしてどんな時に赤本が必要になるかというと、次に書きます『市場単価』にも設定がなく、青本にも記載がない作業内容や試験が存在します。そんな時には、赤本に記載のある基準を使用することがあります。
例えば海上での調査に採用する足場、それに伴い必要になる船舶や地域ごとの湾の天候障害係数など、海上での調査ボーリングの内容は複雑ですが、細かく記載されていいます。
また、地質調査と同時に行われることもある、地中レーダーやアンカー法面の健全性調査などについての歩掛も記載されています。
ただ、青本・赤本のどちらにも記載のない試験や、現場状況に対応した足場及び機材の運搬方法が必要になる場合が少なくありません。
そこが実は一番の積算の難しい部分にもなります。
類似する試験や作業の基準を応用したり、それすらも難しい場合には、実際に現場で行った作業に必要な人数や掛かった時間や材料費、経費を積み上げで金額を算出し、3社程度の提出した見積もりを基に単価を設定することになります。
『市場単価』
市場単価とは、市場調査やアンケート等を基に定められた単価です。材料や調査における掘削や試験にも一つ一つ単価が設定されます。
材料などは日本国内でも地方ごとに相場が変わることから、地方ごとに定められており、『建設物価』や『積算資料』といった刊行物(いわゆる物価本)を用いてその平均を採用される場合が多いです。
掘削や試験の単価については、国土交通省の各地方整備局が発表する市場単価を基本的には採用し、あとは地方公共団体がどの単価を採用するかを公表しています。
現在のところ年に1~2回の改訂が行われ、最近は少しずつですが、市場単価は上がってきている状況です。
現在、高騰を続けているガソリン価格等は販売価格の変動が激しく、地域によっても大きく異なるため、毎月の物価本を確認していく必要があります。
またそれに加え、技術者ごとの『公共工事設計労務単価』及び『設計業務委託等技術者単価』があります。
これは、簡単に言うと、技術者の1人1日あたりその業務に従事した場合の金額です。こちらは毎年3月に改訂が行われます。
最後に
ここまで簡単に積算の基準等について書きました。
会社として仕事として調査を行う以上、どんなに技術力があっても、精度の高い調査を行っても利益が出なければいけません。そのため、積算は非常に重要です。
自分たちが行った調査をしっかりと漏れなく計上し、お金に換えるため、正確な積算の知識が必要になるのです。
ただ、やはり調査の際の実施する試験の内容や調査に関する間接的な調査費(運搬費や足場仮設)はその現場ごとに変わりますので、その都度、基準書と照らし合わせながら積算しなければなりません。
時には、基準書にない試験の見積依頼があり、積算するのに随分時間がかかってしまうこともあります。
そんな地質調査の積算にこれから携わる方々にとって少しでも手助けになれるように、これからもちょっとした積算のについての記事も少しづつ増やしていこうと思いますので、よろしくお願いします。
↓↓↓
※オリジナルのブログには、独自ドメインを!
ピンバック: 『足場 高さ0.3m超』はどんな時? -足場の区分と桟橋の考え方- - 地質調査×イメチェン ブログ