令和3年の土砂災害発生件数は? -地質調査にできること-

令和3年に起きた土砂災害の件数は?

先日、東日本大震災の発生から11年を迎えたことを振り返っていたら、そのわずか5日後にまた最大深度6強の地震が発生しました。

一時、津波注意報も発表されみなさん不安な夜を過ごされたと思います。私も、深夜でしたがテレビのニュースに釘付けになってしまいました。

地震ももちろんなのですが、日本は災害大国だといわれます。特に近年は豪雨災害などもどんどん激甚化しており、年に一度は日本のどこかで大きな水害・土砂災害が発生しているような状況です。

先日、国土交通省より令和3年に発生した土砂災害の発生件数が公表されました。

年間の土砂災害発生件数
図.土砂災害発生件数の推移(S57~R3) ※国土交通省発表資料より

 令和3年には、42の都道府県で972件※1(確定値)※2の土砂災害が発生した。

 特に、8月には33都府県で448件の土砂災害が発生し、直近10年(H23-R2)の同月における平均発生件数(177件)を大きく上回った。

国土交通省 報道発表資料

【令和3年の土砂災害】

 42都道府県で972件の土砂災害が発生し、死者・行方不明者33名(災害関連死を含まない)、人家被害291戸の被害が生じた。

 8月には前線による大雨などにより33都府県で448件の土砂災害が発生し、直近10年(H23-R2)の8月の平均発生件数(177件)を大きく

 上回った。

 7月及び8月に発生した土砂災害が、年間発生件数の約8割を占めた。

 

国土交通省 報道発表資料

この土砂災害とは、がけ崩れや地すべり、土石流などの災害のことを指します。

土砂災害の発生する要因としては、まず思いつくのは雨の影響ですよね。台風や集中豪雨などが発生した年には土砂災害の発生件数が多くなっているのがわかると思います。特に平成30年は7月豪雨の影響で3500件に迫る土砂災害が発生しています。

  

  

大雨による影響は浸水だけではない

次に要因となるのは地震です。私は熊本県に住んでおり平成28年の熊本地震を経験しましたが、その時も阿蘇地方をはじめ多くの土砂災害が発生しました。

特に阿蘇の立野で発生した大規模な土砂災害によって、南阿蘇への主要な交通ルートである阿蘇大橋が崩落するという被害も発生し、熊本県民はその様子を見て愕然としました。

  

  

令和3年は前年から比較して若干減少してはいますが、1年間に1000件近くの土砂災害が発生しています。

また、発生件数に差はあるものの、47都道府県中42の都道府県で土砂災害は発生しています。つまり日本のどこに住んでいても土砂災害は他人事ではないのです。常に、災害に対する心構えと備えが必要になります。

土砂災害に対して地質調査業が出来ること
斜面崩壊の様子
土砂災害の発生現場 下には民家も

このように日本全国で発生する土砂災害に対して、私たち地質調査業として出来ることはなんでしょうか?大きく分けると、

・土砂災害を防ぐ(被害から人々の暮らしを守る)施設を作るための調査

・施設の機能を維持したり、改修したりする際の調査

・災害発生後の復旧工事のための調査

地質調査の技術者は、地質の専門家として土砂災害を防ぐための、法面保護工や擁壁工、砂防ダムの建設などの際に事前に調査を行い、その場所にある地質リスクなどを解析し、実際の工事に生かしていきます。

  

目にはなかなか見えない部分ですが、多くの場面で地質の技術者とボーリングの技術者が活躍しているのです。

  

また災害発生時には、土砂災害の発生現場を確認し、その地域の土質状況や災害の発生状況・要因などを検討したうえで、復旧工事に必要になる地質調査の計画を立案し、出来るだけ早く復旧工事が進められるように迅速に調査を行います。

崩壊した現場での現地踏査
土砂災害発生現場での踏査の様子
災害現場でのボーリング
土砂災害発生現場での緊急調査

災害現場での調査は機材の搬入、足場の仮設なども非常に困難な場合がほとんどです。

二次的な災害に十分に気を付けながら、調査計画に従い、モノレールなどを使って機材を搬入し、崩れた斜面に安全に作業するための足場を作ります。このような困難な現場では特に、長年の培ってきた知識と技術・経験が非常に重要になります。

砂防ダム建設予定地での調査
砂防ダム建設現場での調査
法面保護工の為の調査
法面保護工事のための調査

ご紹介したような地質の技術者の影なる働きに加えてこれからもっと取り組んでいくべきことは、『情報の積極的な発信』だと思います。やはり発信しなければ誰にも届きません。

地質の専門家として、身近な場所や生活の近くに潜在的にあるリスクやどんな地形や場所に注意したらよいかなどをわかりやすく伝えていく。それは一般の人たちとっても、災害から大事な命や家財を守るうえで非常に大切な知識になるはずです。

  

そしてそれと同時に、地質調査の影なる働きを知ってもらうことは、業界自体の衰退を食い止めることにも繋がるはずです。

そうした自分たちが持っている知識や経験、仕事の重要性や災害への知識と備え方など、地質調査に携わる人たちが自ら発信しより多くの人に伝える場所や機会を作っていくことこそ、これから技術者に求められる、災害の多い国に暮らす全ての人と地質調査に携わる人たち、両方の未来を守るための取り組みではないかと思います。

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